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【司法書士が解説!】自力で相続登記をした際に起こる失敗5選

相続登記が義務化され、「自分で相続登記をやってみよう」と考える方も増えています。

法務局のホームページには申請方法や必要書類についての案内があり、時間をかけて準備すれば、ご自身で手続きをすることも可能です。

しかし、相続登記は、単に亡くなった方の不動産を一つ選んで名義変更すれば終わるというものではありません。特に難しいのが、「そもそも相続財産である不動産をすべて把握できているか」「相続人を正確に把握できているか」「登記簿の内容に問題がないか」といった、申請書を作成する前の調査です。

実際に、自力で相続登記を終えたものの、数年後の不動産売却や住宅ローンの借換え、担保設定などの際に問題が発覚し、結局、追加の手続きが必要になるケースがあります。

今回は、相続の専門家が実務上よく見かける「自力で相続登記をした際に起こりやすい失敗」を5つご紹介します。

1.前面道路などの変更漏れ

最初に注意したいのが、相続した不動産に付随する土地などの名義変更漏れです。

例えば、自宅の土地と建物についてはきちんと相続登記をしたものの、自宅前の私道や共有道路については登記をしていなかった、というケースがあります。

また、水路、墓地、共有の山林など、固定資産税が課税されない、あるいは課税額が非常に少ない不動産が見落とされることもあります。

こうした問題は、相続登記をした直後には発覚せず、不動産を売却するときや、金融機関から融資を受けて不動産を担保に入れるときなどに発覚することがあります。

なぜこのような漏れが起こるのでしょうか。

大きな原因の一つは、固定資産税の課税明細書だけを見て不動産を調査してしまうことです。

非課税となっている道路などは、固定資産課税明細書に記載されていない場合があります。

そのため、「課税明細書に載っている不動産=相続すべき不動産のすべて」と考えてしまうと、見落としが発生します。

また、古い建物をすでに解体しているにもかかわらず、法務局の登記簿には建物の登記が残ったままになっているケースもあります。この場合には、相続登記だけでなく、建物滅失登記など別の手続きが必要になることがあります。

さらに、こうした漏れが何年も経過した後に判明すると、相続登記を申請した当時とは相続人の状況が変わっている可能性があります。例えば、当時の相続人が亡くなり、さらに新たな相続が発生している「数次相続」の状態になっていることもあります。

その場合、当初の遺産分割協議だけでは処理できず、新たに発生した相続を踏まえて遺産分割協議をやり直す必要が生じることがあります。

2.未登記家屋の手続き漏れ

次に多いのが、未登記家屋の手続き漏れです。

「相続登記をしたのだから、建物の名義変更もすべて終わった」と考えてしまう方がいますが、これは注意が必要です。

そもそも法務局に登記されていない「未登記家屋」については、相続登記を申請すること自体ができません。登記簿が存在しないためです。

例えば、相続手続きが終わった後になって、市役所から「未登記家屋」についての納税通知書が別冊で届き、そこで初めて未登記の建物が存在することに気付くケースがあります。

未登記家屋については、市区町村において固定資産税の納税義務者を変更する手続きが必要となる場合があります。また、今後その建物を登記する必要がある場合には、土地家屋調査士に依頼して建物表題登記を行うことも考えられます。

なお、固定資産課税明細書に「未登記家屋」と記載されているからといって、必ずしもその表示だけで判断してはいけません。市区町村側の記載が実態と異なる可能性もあるため、最終的には法務局で登記簿を確認し、本当に登記が存在しないのかを確認することが重要です。

未登記家屋の場合、法務局で発行される登記識別情報や従来の権利証も存在しません。この点も、登記済みの不動産とは大きく異なります。

3.担保抹消の漏れ

三つ目は、住宅ローンなどを完済した後の担保抹消登記の漏れです。

「ローンを全部返済したのだから、抵当権も当然に消えている」と考えてしまう方がいます。しかし、ローンを完済したことと、登記簿から抵当権などの担保権の登記が消えることは別問題です。

金融機関への借入金を完済しても、登記簿に記載された抵当権が自動的に抹消されるわけではありません。金融機関から受け取った抹消関係書類を使って、法務局に抵当権抹消登記を申請する必要があります。

ところが、自分で相続登記をする際に「所有権の名義変更」だけに意識が向き、登記簿に設定されている抵当権を確認しないまま手続きを終えてしまうことがあります。

この問題も、不動産を売却するときや、新たに金融機関から融資を受けて担保設定をするときに発覚することがあります。

もしローン完済時にもらった抵当権抹消関係の書類を紛失している場合には、金融機関に再発行などの対応を相談し、その後、法務局で抵当権抹消登記を行うことになります。

さらに注意したいのが、金融機関の合併、本店移転、商号変更などです。昔の銀行名が登記簿に残っている場合、現在の金融機関との関係を確認する必要があり、単純な抹消登記よりも手続きが複雑になることがあります。

そのため、相続登記をする際には、「所有者が誰になっているか」だけではなく、「所有権以外の権利が登記されていないか」まで確認することが大切です。

4.相続人の漏れ

四つ目は、相続人の調査漏れです。

これは相続登記において非常に重要な問題です。法務局に申請したところ、「この人も相続人ではないですか」「この戸籍が必要です」と指摘され、初めて相続人の漏れに気付くことがあります。

特に注意が必要なのが、代襲相続数次相続です。

例えば、亡くなった方の子が先に亡くなっている場合、その子の子、つまり孫が相続人となることがあります。また、相続手続きが完了する前に相続人の一人が亡くなっている場合には、その相続人の相続人が関係してくることがあります。「甥や姪だから相続人ではないだろう」「後妻の相続関係までは考えなくてもよいだろう」といった自己判断は非常に危険です。

実際には、戸籍を出生から死亡まで確認し、誰が法定相続人となるのかを正確に確定する必要があります。

さらに、相続人の人数だけでなく、「相続分」を間違えてしまうケースにも注意が必要です。

例えば、相続人として兄、相談者である弟、後妻がいたものの、その後妻が亡くなり、相談者が後妻の養子になっていたという複雑な事例では、単純に「兄弟2人だから、それぞれ2分の1」と考えることはできません。具体的な身分関係や相続の発生時期を確認すると、兄が4分の1、相談者が4分の3となるケースもあります。

このように、相続人や相続分は、家族関係を感覚的に判断するのではなく、戸籍などの公的資料に基づいて確定する必要があります。

相続人に漏れがあった場合、せっかく作成した遺産分割協議書をそのまま利用できなくなり、改めて相続人全員で遺産分割協議を行わなければならないこともあります。

5.登記完了後の登記識別情報の紛失

最後に注意したいのが、相続登記が完了した後の「登記識別情報」の管理です。

相続登記が無事に完了すると、「これで相続手続きは全部終わった」と安心してしまいがちです。しかし、登記完了後に法務局から交付される登記識別情報は、その後の不動産取引において重要な書類となります。

登記識別情報は、従来の権利証に相当する重要な情報です。不動産を売却するときや、不動産を担保に入れるときなどに、登記義務者が本人であることを確認するために利用されます。

ところが、相続登記を自分で行った方の中には、登記が完了したことに安心して、登記識別情報を紛失したり、どこに保管したのか分からなくなったりするケースがあります。登記識別情報は、紛失しても原則として再発行されません。

そのため、将来、不動産を売却したり担保に入れたりする際には、登記識別情報がないことを前提とした本人確認の手続きが必要となる場合があります。その際には、司法書士による本人確認情報の作成など、通常とは異なる手続きが必要となり、別途費用や時間がかかることがあります。

したがって、相続登記は「法務局で登記が完了したら終了」ではありません。登記完了後に交付された登記識別情報を、将来必要になる重要書類として適切に保管しておくことも、相続人の大切な仕事です。

自分で相続登記するか、司法書士に依頼するか?

相続登記は、必ず司法書士に依頼しなければならない手続きではありません。相続人が少なく、相続関係が単純で、不動産の数も少なく、登記簿の内容にも問題がないのであれば、ご自身で手続きを進めることも可能です。

例えば、亡くなった方の相続人が配偶者と子どもだけで、相続人全員の連絡が容易であり、相続する不動産も自宅の土地と建物だけというケースであれば、必要な戸籍を集め、遺産分割協議書などを準備して、自分で法務局に相続登記を申請することも考えられます。

一方で、相続登記は「申請書を書けば終わる手続き」ではありません。むしろ重要なのは、申請書を作成する前に、相続人と相続財産を正確に調査することです。

不動産については、自宅だけだと思っていたところ、実際には自宅前の私道を共有していたり、遠方に山林を所有していたり、古い水路や墓地に関する持分があったりすることがあります。また、固定資産税が課税されていない不動産は、固定資産課税明細書だけでは把握できないことがあります。

相続人についても、子どもが先に亡くなっている場合の代襲相続や、相続手続きが終わる前に相続人が亡くなっている数次相続などが発生すると、一気に手続きが複雑になります。

このようなケースでは、単純に「相続登記を自分でやるか、司法書士に頼むか」という費用だけの問題ではなく、「最初の調査をどこまで正確に行うか?」が重要になります。

自分で相続登記をしても問題が少ないケース

ご自身で相続登記を検討してもよいケースとしては、まず相続人の関係が比較的単純であることが挙げられます。

相続人が配偶者と子どもだけで、相続人全員が誰であるか明確になっており、全員が遺産分割の内容に納得しているのであれば、手続きの難易度は比較的低くなります。

また、相続する不動産が現在住んでいる自宅だけで、登記簿の所有者も亡くなった方の名義になっており、抵当権などの古い担保権も残っていないのであれば、自分で手続きを進められる可能性があります。

ただし、それでも戸籍の収集遺産分割協議書の作成登録免許税の計算登記申請書の作成など、一定の手間は必要です。

「時間をかけてもよいので、自分で手続きしてみたい」という方であれば、法務局の案内などを確認しながら進める方法もあります。

司法書士に相談した方がよいケース

一方で、少しでも相続関係や不動産の状況に不安がある場合には、司法書士に相談することをおすすめします。

例えば、亡くなった方が長年にわたって不動産を所有していた場合や、複数の市区町村に不動産を所有していた場合には、「自宅以外に不動産がないか」というところから調査する必要があります。

特に、「山林、農地、私道、水路、共有地などがある場合」には注意が必要です。

また、相続人の中に既に亡くなっている方がいる場合、前婚の子どもがいる場合、養子縁組がある場合、認知した子どもがいる場合など、家族関係が複雑な場合も専門家への相談を検討した方がよいでしょう。

さらに、登記簿を確認して、「古い抵当権や根抵当権などが残っている場合」も注意が必要です。

「昔のローンはとっくに完済しているから大丈夫」と思っていても、登記簿上の担保権が残ったままになっていることがあります。

このような場合、相続登記だけを完了させても、将来の売却時に別の問題として浮上する可能性があります。

司法書士に依頼するメリットは「登記申請」だけではない

司法書士に相続登記を依頼するメリットは、法務局への申請書を作ってもらえることだけではありません。

相続登記を依頼する場合には、まず「誰が相続人なのか」「どの不動産を相続するのか」「現在の登記内容に問題がないか」といったところから確認してもらうことができます。

つまり、司法書士に依頼することの大きな意味は、相続登記という一つの手続きを代行してもらうことだけではなく、将来の不動産取引まで見据えて、相続に関する登記上の問題を整理しておくことにあります。

例えば、数年後に自宅を売却する予定があるのであれば、その時になって初めて「私道の名義が亡くなった父のままだった」「昔の抵当権が残っていた」「登記識別情報を紛失していた」と判明するよりも、相続の段階で確認しておいた方が安心です。

相続登記は、相続人から次の世代へ不動産を引き継ぐための重要な手続きです。目の前の名義変更だけを終わらせるのではなく、「この不動産を将来、問題なく売却したり、担保に入れたりできる状態にしておく」という視点も大切です。

迷ったら「申請する前」に相談する

相続登記で問題が発生した場合、登記が完了した後よりも、申請する前に相談した方が解決しやすいケースが多くあります。

すでにご自身で戸籍を集めたり、固定資産税の資料を確認したりしている場合でも、「これで全部なのか」「この人も相続人になるのではないか」「この土地も相続登記が必要なのではないか」と少しでも疑問があるのであれば、申請前に専門家へ確認する方法があります。

また、「すべてを司法書士に任せるほどではないけれど、自分でやった内容だけ確認してほしい」という場合には、事前相談という方法もあります。

重要なのは、相続登記を「早く終わらせること」だけではありません。

後から別の不動産が見つかったり、相続人の漏れが判明したり、古い担保権が発見されたりすると、かえって手続きに時間や費用がかかることがあります。

だからこそ、相続登記では「自分でできるか」だけではなく、「自分でやって問題がないケースなのか」を最初に判断することが大切です。

「相続登記」でお困りの方へ

「相続登記を自分でやろうと思っているけれど、不動産が全部把握できているか分からない」「戸籍を集めたものの、相続人がこれで全員なのか不安」「登記簿に古い抵当権が残っている」「未登記の建物があると言われた」など、相続登記について不安を感じるポイントは人それぞれです。

相続登記は、一見すると単純な名義変更に見えます。しかし、実際には相続人の確定、不動産の調査、登記簿の確認、遺産分割協議、必要書類の収集など、さまざまな確認を積み重ねて行う手続きです。

特に、不動産の数が多い場合や、相続関係が複雑な場合長期間にわたって相続登記がされていなかった場合には、早めに専門家へ相談することで、後から発生する問題を防げる可能性があります。

「自分で手続きをするか、司法書士に依頼するか」を迷っている段階でも構いません。

まずは現在の相続関係や不動産の状況を整理し、どこまで自分で対応できるのか、専門家に依頼した方がよい部分はどこなのかを確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

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