公正証書遺言があっても安心できない?兄の死によって遺言の一部が無効となった相続手続き
ご相談者様の状況
ご相談者様
倉敷市在住のAさん(55歳・男性)
ご相談内容と相続の背景
Aさんは先日お父様を亡くされました。
お父様は公正証書遺言を作成しており、全財産をAさんと兄のBさんへ各2分の1ずつ相続させるという内容でした。
しかし、その兄Bさんはお父様が亡くなる前にすでに他界していました。
Aさんは遺言の内容に従って、全財産を兄弟で分けるつもりでしたが、金融機関で相続の手続きを進めようとしたところ、思わぬ指摘を受けました。それは「兄Bさんに相続させるとされた2分の1の部分は、Bさんが先に亡くなっているため失効しており、その分については相続人全員の合意が必要」というものです。
実はお父様には前妻との間に子どもが数人おり、つまりAさんとは異母兄弟となる相続人が複数存在していました。
中には全く連絡先の分からない人もおり、Aさんは自分一人で解決することは難しいと判断しました。
費用はかかっても、相続の専門家に依頼しようと決意されたのです。
相続手続きの設計
司法書士からのご提案内容
まず、兄Bさんの死亡により、遺言の半分が効力を失ったことを踏まえ、戸籍や附票を収集し、亡くなったお父様の法定相続人を全員特定することから着手しました。
その結果、Aさんを含めて8名の相続人がいることが判明しました。
遺言に従えば、不動産はAさんとBさんの共有となるはずでしたが、Bさんが亡くなっているため、そのままでは不動産の共有状態が複雑化します。
そこで、全員の同意が得られた場合には、遺産分割協議を行い、不動産の取得者を単独にすることを提案しました。
これにより将来の管理や処分の手続きがスムーズになります。
相続財産は、父名義の不動産と複数の金融機関に預けられた預貯金です。
当事務所では、不動産の登記簿や固定資産評価証明書を取得し、預貯金については残高証明を取り寄せ、財産全体の把握を行いました。
相続手続きを行うメリット
今回のケースでは、公正証書遺言があったにもかかわらず、その内容通りに手続きできない事態が発生しました。
その原因は、遺言作成時に「受遺者が先に死亡した場合の代替相続人(補充受遺者)」を指定していなかったことです。
このような場合、遺言は該当部分について無効となり、法定相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
専門家が関与することで、次のようなメリットがありました。
• 戸籍収集や相続人調査を一括して行えるため、相続人全員を正確に特定できた。
• 遠方に住む相続人や連絡先不明の相続人とも、代理人として文書でコンタクトを取り、合意形成を進められた。
• 不動産の共有を避けるための協議案を提示し、将来のトラブル防止につながった。
• 預貯金解約や相続登記までを一括して進行できたため、相続人の負担が大幅に軽減された。
相続手続きの流れ
1. 戸籍収集・相続人の特定
2. 財産調査(不動産・預貯金)
3. 相続人全員への連絡・意向確認
4. 遺産分割協議書の作成
5. 各相続人から印鑑証明書の取り寄せ
6. 預貯金解約・相続分配
7. 不動産の相続登記申請
今回の手続きは、相続人の人数が多く連絡が取りづらい相手もいたため、半年以上の期間を要しましたが、最終的に全員が法定相続分を取得する内容で合意が成立しました。
まとめ
事例の要約
この事例は、「公正証書遺言があれば安心」という一般的な考えに警鐘を鳴らすものです。
遺言は形式的に有効であっても、受遺者が先に亡くなるなど想定外の事態が起きると、その部分が無効となり、結局は遺産分割協議が必要になります。
特に、前妻との子や疎遠な親族が相続人となる場合、連絡や合意形成が難航することも少なくありません。
幸い今回は、相続人全員の協力と専門家のサポートにより、無事に手続きを終えることができましたが、Aさんは「父も遺言を作成する際に専門家へ相談していれば、もっとスムーズだったはず」と話していました。
司法書士からのメッセージ
相続や遺言は、一見シンプルに見えても法律や人間関係の複雑さが絡みます。
遺言書を作成する場合は、必ず専門家に相談し、想定外の事態にも対応できる内容にしておくことが重要です。
また、今回のように相続人の数が多い場合や連絡が取れない相続人がいる場合は、早めに司法書士などの専門家へ依頼することで、時間と労力を大幅に節約できます。
倉敷相続・遺言相談窓口では相続の無料相談を受け付けております。相続に関してお困りごとがあればお気軽にご相談ください。